動景 9、「 闘劇 」

 

 一時くぐもった天候も晴れ、透き渡る霞の海。昆虫共が意気揚々と生を謳歌する森に日光が差し込む。

 快き空において天下を望むは赤き球。山岳の上にぷかり漂う異形、その中に。

 赤い着物の男は胡坐を組んだまま頬を掻いた。

 瞳は閉じたまま。

 霞む視界に見た祠。

 涙、頬を伝う。

 強がり、などと心が在るのはやはり生身を得たからであろうか。

光天館が野蛮に砕け、幻牢館は背徳の一振りに散り――

 言葉の最中。赤い球へと入り、男の手にある小刀へと収まる灯。

そして、今ここに然汪館が人の知に遅れを取った……。はてさて、吾が世に戻るは望まれぬことか?

 静々と、一字一句に5世紀を跨いだ憎悪を込める男。

 青年は赤い瞳を開き。最後となった左の狐を見た。

 

 背後の姿。黒髪が垂れた緑地の甲冑。

 脇には足のある蛇が三匹首を擡げる様の兜。

 端正で見た目に特徴が少ない白狐の仮面を捲り、鏡を覗き込む。

主――俺を収めるか

 押さえているのか。低く、唸るような声は小さい。

 

 赤い着物の青年は滾る赤い瞳を向けたまま、緑が目立つ狐に威圧を与えている。

 疑いと嘲笑が交差する主の視線にも動じず、仮面を戻して立ち上がる緑の狐。

「現世がもの珍しいか? しかし、生無き物には不要な事よ」

 小刀を眺め、その切っ先を緑の狐に向ける青年。

悠久を超え、残る――習慣とは

 低く、唸るような小さき声で答える緑の狐。寡黙な狐は隣に立ててある己が武力を手に取った。

 

 ズン、と廻す薙刀の切っ先。甲冑に包んだ身体を撓らせて、赤い球で武の踊りを見舞う。

 

 流れる水流を、落ちる木の葉を、揺らぐ炎を、空を刺す雷の如く。

 

 朧な幻影を映すかのように魅了する刃の輝き――赤き影を紙に、詩を散らす。

 

 一句終え、強く置かれる長刀の柄。

 すらり、舞の動作の内に。手を青年に向け、狐はその視線を直ぐに構えた。

 滾る眼光の青年は表情を微塵も変えず、小刀の切っ先を下げる。

 それを見た緑の狐は主に一礼し、薙刀を携えて背を向いた。

「――いざ、参りまする

 言葉数少なく、泥土に沈むように赤い球から出でる武人。

 球から落ちる甲冑の身。それが「ピュイ」と口笛を鳴らすと、霞から靄を生じて現れる巨馬。

 天を駆ける巨馬の背に乗り、「応ッ!」と声を上げて手綱を引く。

 馬は一度身を震わせた後、空を踏み鳴らして下へと駆け下り始める。

 疾走する馬に跨り、上体を屈める緑の狐。

 空に甲冑の当たる音と蹄の発する火花を残し、下るは森の一角へと。目指すは一点――

 

 

――それが突き進む一点もまた、山林を走破していた。

 一時変わった天候も、地鳴りや轟音も気にはならなかった。それより面白いことがこの先に待っている。

 ここを走る黒髪短髪の青年は、獣と見紛う野生な出で立ち。王の余韻か、それとも天に在る強者を察してか。その身には白い文様が早くも浮き出ている。

 穴の空いた下の下着はまだ頑張っており、ほぼ全裸だが辛うじてセーフ。

 

 木々の狭間を通り、巨木の根を跳び、岩を越え。“白虎”の前進は弛まない。

 走る、走る。人より猿に近い野蛮な走りは山の凹凸を物ともせず、屈強に進む。

 “轟”と過ぎ行くので、動物たちは慌ててその進路から離れて行く。

 

 視界は激しく揺れ動き、景色は吹っ飛んで後方へと去る。

 顔を叩く枝葉など無効で、そこらの岩は蹴飛ばされてこれまた無効。虎の突進を止める障害は今に無い。

 

 岩壁を跳び越えて尚も見据えた先。

 その正面に聳えたのは、苔の覆った岩石。

 知ったことか。それより前進。

 虎の王は一足に跳び、岩石の寸でに降りる。勢いはそのままに、前進の一環として瞬時に叩き込む八発の拳撃。

 音を立てて割れた岩石を頭突きで突破、粉砕する。

 岩石の欠片が宙を動く。

 

 屈んだ虎が口を開き、牙を剥き出して飛び上がる。

 岩石の欠片が当たろうとも、その跳躍は淀まない、弛まない。

 

 岩石の欠片が宙を動く。

 

 木々が開け、光が盛んとなった景色にその姿。

 馬上にある武者が薙刀の切っ先を輝かせる。

 

 

 宙を交錯して過ぎた2つの影。

 

 

 虎の牙は馬の側面を抉り、通った。

 薙刀の切っ先は虎の肩を裂き、過ぎた。

 

 馬は嘶き、鼻から靄を噴出す。

 白虎の肩からは血が噴出す。

 

 同時に振り返り、面を合わせる武人と野人。

 緑の狐は馬を静めながら背の低い強者を見据えた。

 まっこと、小さきながらも油断ならぬその拳足。馬を掠めて去ったかと思いきや、身を翻して踵を脇腹に叩き込もうなどと、よくも咄嗟に動けるものだと感心する。

 無論、動きを察して防ぎはした。防いだのだが……。

 “ピシリ”と、小さなヒビが入る仮面。

受けてこれか――

 思わず声が零れる。

 面を介して見たのと対峙したのとではやはり、迫力・圧力が異なる。

 

「ガルルァッ!!!」

 馬上で感嘆する狐に向かって突進する白虎。

 右腕の肌が黒ずみ、一層白い模様が目立つ。

 

 半秒遅れて緑の狐も馬を走らせ、その蹄で小さき身体を踏みつけにかかる――。

 

 

 

 ―― 敢えて速度を緩め、瞬時に身を屈めて再加速。半身に放つ左側面の寸撃 ――

“振 山”

 

 鈍く、重厚な衝撃が響く。

 インパクトの地から一寸たりとも下がらず、追撃の構えをとる白虎。

 直撃を受けた巨馬は体勢を大きく崩し、全体を仰け反って呻いた。

……!!

 緑の狐は必死に手綱を持ち、堪えている。

 

 屈んだ構えを利として、横に跳躍、半身のまま標的の懐に立つ。

 相撲の張り手に似た構えで右手の平に力を込める。

 

 

―― 先人が積み重ねた技巧が導く、最も力が乗る動作からの平手突き ――

“ 牙天昇 ”

 

 晒された馬の腹部を打ち抜く虎の掌。

 巨体である馬は完全に地から離れ、空を進んで岩壁に叩きつけられた。それに乗る緑の狐も同じく、「……ぐがっ!」と声が出る。

 

 馬は一声嘶いた後。消えるように靄となり、霞みに混じれた。

 “ドンッ!”と地を踏み、両腕に力を込めて咆哮する白虎。

 

 靄が薄れ、悠然と立ち上がる甲冑の狐が霞め見える。

 “ハオッ!”と薙刀を廻し、靄を吹き飛ばして仁王立つ緑の狐。

 

「……無双館。それが俺の名だ」

 普段より強めた声。同時に通りも良くなっている。

 甲冑には緑が多い。兜は無いが、髪が痛むので好まない。どの道必要も無い。

 

 薙刀の切っ先をゆっくりと持ち上げ、身を反らして後方へと持ちゆく。

 切っ先が地に触れたと感じ取るが否や、それを豪快に振り戻す。

 

 振り下ろされた刃が地に突き刺さる。

 

 同時に地は一直線に抉れ、霧も割かれて真空の隙間が縦一線に生じる。

 

 放たれた“切断”の波を回避し、突き進む白虎。

 その後方では森林が一列に弾けている。

 

 緑の狐は次いで体を回し、長刀を横一線に薙いだ。

 白虎は危険を察知し、転がって切っ先の軌道線上を潜った。

 

 刹那。森林を薙ぐ横一線の衝撃。

 身を起した白虎の後方にある木々は壮大な斬撃音をたてて倒れ、森林は禿げ上がってしまった。

 

 突如に広がった地平線など意にもせず、突進する白虎。

 それを待っていた緑の狐。

 

脇に薙刀を構え、一歩踏み出してそれを突き出す。

 

一つではない。

二つ、三つ――――指を折って数えてはとても足りぬ。

 

 

それは、無数の“突き”。

 

 

 一撃一撃が速く、一撃一撃が致命的。

 横より乱れ飛ぶ斬撃の霰。

「うっっガ!!??」

 虎は殴ろうとした拳も蔑ろに、とにかく避ける。

 

 避ける、避ける。――が、前に進めば目が追いつかなくなり、下がろうにも斬撃は遥か後方の山々を切り裂く射程。左右の動きはその嵐のごとき斬撃が封じている。

 避けてはいても動けない。これが数秒の出来事だから尚たまらない。

 そうこうしている内に更に狐は一歩を踏み出す。

 ついに目も切っ先を追いきれなくなったか。

 

 頬を裂かれ、血が飛ぶ。

 腕を裂かれ、血が飛ぶ。

 脇腹を裂かれ、血が飛ぶ。

 危うい目元を裂かれ、血が飛ぶ。

 

 いずれは致命打があるぞ……という内に。やはり迫った心の臓への斬撃。

 

 白虎は進めず・退がれず。

 しかし、それらが彼の頭を“悩ます”などという怪奇現象の要因にはならない。どのみち、白虎はこの状況で何か物を考えてなどいないからだ。

 

 よって、反射・本能。それのみの彼がとった行動――

 

“ ガシッ ”

 

――と捕らえたるは薙刀の柄。

 長い刃が斜にした胸を少し裂いたが。ともかく、切っ先の嵐はこれにて止んだ。

!!!?

 どう凌ぐのか、と想定を巡らしていた緑の狐はこの動きも感じていたが、この“強さ”は想定していなかった。

 怪力無双である狐の腕力、もといその全身の力を込めても動かぬ切っ先。

 そして白虎もまた、歯を食いしばっていた。彼も体勢はやや悪いとはいえ、踏ん張りはしっかと利いている。だが、それでも動かぬ薙刀。

 

 鉄球を掌で粉砕し、乗用車を投げ飛ばすこと容易い二人の、拮抗する力。

 何よりもこの薙刀、それでも軋みすらしないことが宝具たる証であろうか。

 

 軋ませていた虎の歯は牙へと変化し、体色は黒ずんでいく。

 狐の周囲に揺らぐ緑がかった陽炎。足元の地が耐えられず、裂け始める。

 

 白い文様がいよいよくっきりとし、目も完全に白くなった白虎。その力が均衡を若干にも上回り、薙刀が彼の胸元から動いた。

 だが、それに応じて空に響き通る高い狐の声。

“ヱァアっ!!!”

 柄から振り払われる手。

 振り払われたそれは白虎のもの。

 体勢を完全に失った白虎に振り下ろされる薙刀。

 

 そう、完全に体勢は崩れていた。

 だが、体勢が崩れるなどということ。それは虎の王にとっては無為である。

 

 仰け反り、地から片足が離れた白虎はその実、直前に本能のままに地を蹴っていた。

 つまり、その崩れる体勢の速度は早く、地に手が着くのも早い。

 大地を握るように指をめり込ませ、身を回転させる白虎。

 

 2寸あったかどうか。薙刀の切っ先は白虎の後ろ髪を散らして大地に刺さった。

 衝撃で地は割れ、先の森林はいよいよ無残に弾けたが。

 

 「しまった!」と面の下の顔を青ざめる狐に向かうは足刀。

 左手足で強引に身を上げ、右回転に放たれた肋骨下部辺への回し蹴り。

 

 

 この動き、虎輪なる武技の応用に他ならぬ――。

 

 

 鎧も無為にする貫通性の高い足撃は狐の身を後ろに飛ばした。

 それでも宙にて姿勢を戻し、しっかりと着地をする緑の狐。

 

 だが、その仮面――“パキッ”――と割れた右の面。

 

 面全体の3割を失い、「あぅっ!」と声を出して薙刀の柄で身を支える甲冑の狐。割れた面から覗く凛々しき瞳孔は翠に燃えている。瞳を飾るは、“アイシャドー”なる現代の化粧用具。

…………ふっ、ふふっ

 翠の狐は透き通った声で笑みを溢している。

 

 振り切るように顔を上げ、薙刀を横手に構えて立つ。堂々たる気迫で狐は息を深く吸い込み、次の声に備えた……。




“ 面白いっ!! 惚れてしまいそうじゃ!!! ”



 響き渡る高い声が山地を駆け飛ぶ。

 陽炎は迸る衝動となって激しく流れ、山肌全域、上天までもが震え上がる。

 ビリビリと体毛を騒がせる気迫が嬉しくて、白虎は牙を剥き出す笑顔になった。

「人よ、強き人よ。俺は楽しいっ!! できれば、生ある内にそちと一戦交えたかったものよ!! それは無念っっ!!!」

 響き渡る高い声。

 翠の狐は本来不要な甲冑の上半身を脱ぎ捨て、サラシで胸を巻いた半身を晒した。この姿で彼女が戦場に立つのは、遥か古来、異国の地にて。3万の軍勢を一手に引き受けた時以来である。

 一層に激しくなる周囲の振動。

「惜しいが、これ以上は国を吹き飛ばしてしまいかねぬ。これにて終幕としようぞ、雄雄しき人ヨ!!」

 そう言うと。翠の狐は薙刀を短く持ち、左の手を前に、身を低くして両足に力を込めた。

 

 あまりの気迫に音は消え、空を巻き上がっていた塵芥が消滅する。

 激に流れる緑の闘気に覆われ。靡くは短き、黒き、剛毛なる頭髪。

 

 小細工などない。最も速く、最も強く。それだけを求める構えの強敵。

 白虎は速く、など考えはしていない。ただ、『強く』と野生が求める――――――。

 

 

 無音という爆音の中。左右に大きく身を弾ませながら距離を詰め、加速する翠の狐。

 

 しだいに左右に動く幅は狭まり、目指す一点に到達する時には直線となって迫る。

 

 

小細工無用。加減無用。その他一切も、無用。

 

『一撃』、それ以外の発想はこの場に必要無い。

 

 

 

 両手に持ち替え、全身全霊の一点落とし。己の最大を注ぎ込む、“突き”

 

 

ならば、対するは……?

 

右の拳を腰に引く。反動を作る左腕は、自然に、緩やかに。

 

―― 力まず、無駄な発散は一切行わず。一瞬に全力を込める ――

 

 放つは己を象徴する、“正拳”。

 

 

 

  



 

 

 

 ……――――拳撃の刹那。力を込めたことによる、上体の揺れ。

 事前にある筋肉の弛緩と、一撃に際する迫力の触れ幅が見事、対岸に無ければ成らないその姿勢変化。

 

 全うな、突き詰められた正拳、武技とは。基本で単純ながらも、些細な工夫など蹴散らす問答無用の絶技と化す。

 

 狐の一撃も無論、極地にあった。互いに極められた絶技を交わした場合、武の狭間にある判決はいかに転がるのか。

 

 それは、正しく神のみぞ知る――だが。ここにある極限の両者の場合、その神すら知りえぬ。

 「優ったが勝ち」。そうとしか言えない。

 

背景は緑の激動。 二つの影、激突する。

 

 左の肩を大きく裂いた薙刀の切っ先。

 それを持つ狐の面には両断する亀裂が深々と刻まれている。

 

 狐の懐で停止している小柄な猛獣。

 その拳は狐の胸元にしっかりと食い込んでいる。

 

 弾ける仮面。露わになる女性の表情。

 彼女は清々しく微笑み。その翠の瞳に、己の顔をしっかと見上げる青年を映す。

 光を放ち、ひび割れ始める狐の体。

 

「強かったぜ、お前……」

 狐の懐で。拳を収めつつ、白虎は一言だけ残した。

 

 翠の狐は「フ」と笑い、名残惜しそうに口を開く。

「そちもな。次があるなら、戦場以外で合いたいのぅ――」

 

 崩壊しながらも、最後の力を使って体を屈め、彼の額に口つける翠の狐。

 闘気の余波が残る無音の地で、それでも通う強敵の言葉。

 

 

 狐が光となって消え去る。

 光が広がると共に闘気も掻き消え、周囲の振動もピタリと止む。

 さすがに背後の切り株の群れを見れば「何事も無かったかのように」などとは言えぬが、平常な様といえる状況には戻った。

 

 

 虚空に散った狐。その跡に残った一点の灯は、近くに浮かぶ赤球へと飛んでいった。

 それに並び。残っていた薙刀も持ち主の元へと戻っていく。

 

 白虎は――――まだ、満足していない。

 あのメラメラビリビリも、今の凄い緑色も――それ以外にも何やら“強さ”が集まったらしい赤い球の中。

 

 破れて風に飛ばされそうな下着一枚の青年は。戻る薙刀に突かれたのか、突然に割れてしまった赤い球の跡を睨みつけている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 景 間 ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動景 10、「 落神 」

 

 最後に残った緑も破壊され、手元へと帰ってきおった。

 赤い着物の青年は深く溜息を吐いた後。「いたしかたない」と胡坐を崩した。

 

 仮住まいである赤球を解除し、小刀に封ずる赤い着物の青年。

 小刀の刃は四色に輝いている。

 

 

 爽快に広がった視界。

 だが、心は少しも爽快ではない。

 わざわざ分神を使ったというのに、自分の願いは叶わなかった。実に不条理である。いや、彼にとってはそれも己の責任となるのか。

 やはり運気や定めを制するは今の自分に有らずか、と若干に心を痛めながらも一層、憎き宿敵への憎悪を滾らせる。

 

 兎にも角にも、自ら動かねばならないというくだらない事態は現実のもの。かつてはそのようなこと、考えもしなかったが。これも今の限界を示す証なのであろうか。

 そうでなければ、彼の分神があのような下賎の獣などに遅れをとるはずもない。文明の化身たるよく解らない人や裏切り者の侍などより、更に幾分も下賎である。

 

 もう一度乱世にし、今一度均衡を崩すしかあるまい――などと赤い着物の青年が無表情に考えていると、遥か足下から獣が喚いている様が見えた。

 放っておいてもよいし、興味も薄いのだが。

 これから向かう場所への肩慣らしにはなるか、と薄く期待を抱いて地へと降りる青年。

「大オオ大おッッッ!!!」

 待ってました! と白虎は拳を打ち鳴らして咆哮を上げた。

 赤い着物の青年は「久方よのぅ……」と呟いて小刀を眉間に当てる。

 

 “ズグリ”。眉間に深々と刺さる刃。

 

 刺さり、柄だけ見える小刀から赤い液体が溢れ、青年の顔を覆う。

 流動する液体は固まり、仮面を作った。

 それは“狐”なのだが、目は8つあり、様相は見た目にそれとは解らない怖ろしいもの。

 活目せよ!――――これこそ古来の神物、“辰羅神”の御姿に相違無い。

さて、終わろうか……

 八つ目の狐は呟くと、眼前に翻っている小柄な猛獣に手の平を向けた。

 

“ 吟 ”

 

 なる音と共に放たれる黄金とも判別できぬ輝き。

 白虎は両腕を重ねて防いだが、全身が焼き焦げる。

 彼は四足を用いて着地すると、目線を前に刺した。

 

 その白虎を濁流が飲み込む。地下より巻き上げられ、土と混ざり泥土と化した濁流。

 だが、その渦中に見つけた岩を踏み台にし、濁流から飛び上がる白虎。

 

 出でた空には無数の氷柱が既に落下を始めていた。

 注ぐ氷柱が刺さり、血が滲む。

 だが、白虎の黒ずんだ身体は白い文様を浮き立たせ、蒸気を上げて肉体の修復を始めている。

 氷柱は蒸発し、血の流出は止まる。

 

 ふ、と上空に影が。目を凝らせば、赤い着物の姿。

 樹木の枝に降り立ち、跳び上がろうと虎の白眼が天を見据えた――。

 

 

 

 

人の顔がある。

 

 

 

 青い髪に、独特の髪飾り。その顔面、見覚えがある――――が。怒り狂った猛獣はそんな光陰の彩など気にもせず。再び地に足を着け、飛び上がった。

 

 飛び上がった虎の進路を妨害する岩石。

 それを繰り出した突き上げ拳で粉砕する白虎。

 

 開けた視界の先。

 振りかぶっている、八つ目の狐。

 手に持つ薙刀は白光し、眩いほどに周囲を照らしている。

 

 投げつけられた白光の薙刀。

 宙に在る白虎は音の数倍にあるその速度を――――見えはしなかった。

 

“ズドッ……”

 

 鈍く鳴らし、小柄な青年の胸を貫く長刀の刃。

 口から溢れる赤い液。

 

 それで終わらない、薙刀の一撃。

 

 

 

 

“ 応ッ ”

 

 

 

 

――と、響く爆発の音と共に光を発散する切っ先。

 一瞬だが、それは日の光より強く、太陽深部に匹敵する一瞬。

 

 全ての方角に平等な6桁を軽く越えた高熱は、遥かな地から見れば球の形に見えただろう。爆発により、濁流で荒れていた森林はその濁流ごと消滅。余波は山林の木々をなぎ倒した。

 

 爆心地の周囲1kmに在った全てが蒸発。僅か5秒前が思い起こせない程の殺風景。

 爆発の最中にいた八つ目の狐は宙に胡坐をかいて結果を見据えていた。

 

 だが、結果も何もこの状況である。「何も残っていない」が結果に相違なかろう。それはもちろん、八つ目の狐も思うところではあるのだが……――――不自然。

 

 風を吹かせ、塵を飛ばす。

 巨大なクレーターとなったかつての森林。クレーターの土は瞬間的な常軌を逸した高温によって、ガラス質に変化してしまっている。

 その、ガラス質の上――。

 八つ目の狐は面を通じて味わった「まさか」の思いを今はその身に感じている。

 

 

白。ただの白色。

 

 

 しかしおそらく、それは白に見えるだけで、実際には色なんてものは無いのだろう。ただ、光すら無い黒にも成らず、在る事の最大である白色に見えるだけ。

 

 影も何も無い。ただの真っ白な人の形。

 辛うじて、それを見る脳がその輪郭や顔立ちを判別しているに過ぎない、その人。

 真っ白に見える人は「じ……」と見上げている。

 

 見上げられている八つ目の狐。

 彼は、まだ拳も作っていないその人を見ただけで。自らの仮面が砕け散る様をイメージしてしまった――。

 八つ目の狐はその位の高さからくる見解か。無為を理解して、自ら地へと赴く。

 

 ガラス質の大地に降り立ち、立ち尽くす狐。

愚かな天よ。ここで吾を終わらすとはな……

 世に向けて最後に警鈴を轟かせる狐。過去、栄華を極めた存在のせめてもの意地であろうか。

 

 いくらか間があった。5分ほどであろうか。彼が動き出すまでにかかった時間は。

 

 真っ白に見える人は無防備な狐に歩み寄る。それしかない、という具合に。

 その人がいよいよ拳を作り、打ち抜こうという所――――それが、彼の限界だった。

 

 力尽き、項を垂れる。その姿には白い文様もなく、小柄な青年がそこにいるだけ。

 前のめりに倒れる白虎。胸部の傷跡以外は健康そのものであるその身を隠す衣類は一糸も無い。

 

 八つ目の狐は倒れた青年を見下ろし、再び呟いた。

ム、惜しむか――そうだろう、それが吉である……

 倒れた白虎の元へと、今度は狐が歩み寄る。

 イビキをかいている白虎は昏睡もいい所で、起きる気配は無い。

 

 爆心地に落ちた薙刀を手元に戻し、肩に担ぐ狐。

 これをもって始まりとしよう――復讐の時を、栄華を、信仰を取り戻す戦を――――。

 

 

『テキトーにでも、歩ってみるものだなぁ――BINGOってか?』

 

 

 八つ目の狐が顔を上げる。

 視線の先。クレーターにある若いシルエット。

 

 赤茶色の前髪を掻き上げ、その男は周囲を見渡した。

「しかし、派手だね――。まぁ、嫌いじゃないよ、俺は」

 サングラスを胸ポケットに仕舞いながら、ジャラジャラした男は近寄ってくる。

 声を張らずに会話ができる程度の距離に来ると、男は立ち止まって革ジャンの裏から小さな箱を取り出した。

……この者の友か?

 辰羅神が訝しげに問う。

「シラネェ。そうかもしれねぇし、そうじゃねぇかもしれねぇし」

 酷く投げやりに言葉を吐き捨て、煙草を咥える指輪の多い男。

横暴で……傲慢な。人の醜きを集めたような者よ

「そう、僻むなって。面の良し悪しは生まれつきだからさ。空に向かって吠えてなよ」

 そう言って辰羅神の仮面を指差す態度の悪い男。

 指は突きつけたものの、視線は吐き出した煙を追っている。会話相手よりも煙の方がまだ興味ある、とでも言いたげに。

卑小な生命の戯言も、聞き流すには限度がある。あまり耳に障れば、いかに他愛の無い虫と言えど、踏み潰してしま――

「長い長い、セリフうぜぇ。やること取られたからさ、とっとと帰りてぇんだよ、俺」

 ・・・神だとか人だとか、関係なく。非常に良識が薄い気配の男。何の宣告も無しにこうして銃口を突きつけていることも実に節操が無い。

 男の右手に青く光るは、41口径の大型拳銃。

 それを見た辰羅神は嘲笑い、無防備に手を広げてみせた。

そんな物が吾に“当たる”ものか。神秘の欠片も無い、人の浅知恵の結実如――

 

 

“ ガウンッ ”

 

 言葉を遮り、鳴り響いた銃声。

 狐の胸元を貫いた弾丸。しかし、赤い着物には傷一つなく、八つ目の仮面は健在。辰羅神は「あっは……」と哀れげに乾いた笑いを贈った。

 着物の袖より打ち込まれた弾丸を取り出し、眺める。

これで消える生命の儚きよな。吾は涙を禁じえぬわ

 弾丸を地に落とし、首を振る狐。

 弾丸を放った男は「ふ〜ん」と唸り、銃口から上がる煙を眺める。

 銃士の男は再び銃口を狐の胸元に定めた。

悪いが、それが最後である。人の愚かに付き合ってやるのもここまでよ

 着物の懐から扇を取り出し、ハタハタと扇ぐ狐。

「そりゃ結構。俺も狐なんかとこれ以上しゃべくりたくねぇから」

 

 

青かった銃口――それが、赤色に染まる。

赤は右手も染め、銃士の腕を侵食していく。

 

この赤。血の色合いではなく、絵の具のように鮮やかなる、赤。

 

 鮮やかな赤が男の右目をも侵食。それと同時、真紅の片翼が右の背より開く。

 引き金が引かれ、落ちる撃鉄。

 マグナムの弾薬が弾け、銃身のレールを螺旋回転して進む弾丸。

 鮮やかなる赤に染まった弾丸は銃口を飛び出し、空を突き進む。

 

 赤い弾丸が狐の胸を貫いた。

 異変――そんなことを思う間も無く割れる仮面。

 

 狐の全身から赤い光が発せられる。

 ようやく狐は異常に気がつき、「んなっ!!?」と声を上げた。

ば、馬鹿なっ!? そんな、こんなハズは――無い! 有る道理が無い!!

 取り乱し、弾け飛びそうな身体を押さえる狐。

「・・・ありゃ? なんで消滅しないんだ?」

 赤く染まっていた男――“朱雀”もまた、困惑する。

 しかし、瞬間的に消滅はしなくとも。狐の仮面の崩壊は始まっており、その身にも亀裂が奔っている。

 「ヌォォォ」と唸り、咄嗟にあれこれ手を尽くすものの、如何ともしがたいこの崩壊。

 

 獣でも無く、謎の文明人でも無く、裏切りの侍でも無く――よりによって、この下賎。

 

あ――――ありえん!!!!

 最後の最後、狐は今の状況を的確に表した言葉を吐いた。

 

 

 消 滅。        輝きの中、狐は静かに消滅していく……

 

 

 

 断末魔を残して完全に消え失せた狐。爆発も何も無かった。

 朱雀は何か腑に落ちない気分は残ったものの、「面倒くせぇ」と投げやりに考えて忘れることにした。

 

 さて、と傍らを見れば仲間である白虎の姿。

「んぐぉぉぉー、ごがぁぁぁー」

 と、豪快なイビキをたてるそれ。

 どうしたことか、全裸である。うつ伏せだからまだ何とか許されるものの・・・いや、やっぱりこれはアウトであろう。

 連れて帰ろうかとも朱雀は考えたが、こんなのと2ケツしたくはない。

 

 「ん〜〜」と、10秒ほど悩んだ結果。

 

 朱雀は歩き始めた。何故か開けていた森の跡地に駐車した愛馬の元へと向かう。

 変態坂など登ってたまるか。かってに1人で走り回ってくださいな、と諦めの表情を浮かべて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クレーターに残された全裸の青年。

 

 

 満足気に寝息を立てている彼を親切な老人が発見して保護しなかったら。きっと彼は「腹が減った!」と東京の自宅へ向けて駆け出していたことだろう。

 

本能のままに――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 四 聖 獣 ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。奈由美です。

 今日も私達の世界はとっても日差しが強くて、洗濯物が山のように重なってます。そちらの地球はどうでしょうか、もしや雪など降ってませんよね?

 

 先日、私達の家にお客さんがやってきました。とても綺麗な娘さんで、名前は天上 輝歌さんといいます。私はテルちゃんと呼んでます。

 もちろん、こんな汚い家に訪ねてきたからには依頼者さんでしたが、とても素敵な人でした。今度、また会うことができたら料理を教えてくれるって約束しました。私はお返しに、PSすら知らない彼女にゲームの素晴らしさを教えてあげると約束しました。

 

 正体不明の婚約者さんに会いたい、という彼女の依頼でしたが…相手の方に不幸があったらしく、願いは叶いませんでした。龍ちゃんは多くを話しませんでしたが、不慮の火事で亡くなっていたということです。

 

 テルちゃんは、結局名前しか解らなかったその人の不幸を聞いて涙を流していました。婚約者さんですが、顔も、性格も、好みも解らないその人のために。

 辛いのに、きっと、凄く切ないのに。テルちゃんは涙を拭いて「解りました。私のためにご苦労を厭わず――本当に感謝しております」と龍ちゃんに頭を下げた姿は、同い年とは思えないほど立派でした。

 

 ――けど。感情を堪えるその姿は、やっぱり、何かがテルちゃんらしくないなって、思いました。まだ会ったばかりだったけど、彼女が我慢している姿を何度も…いいえ、いつだって、彼女は我慢をしている――そんな気がしていました。

 だから、龍ちゃんの言葉はきっと。そんな私にも気を使ってくれたのでしょう。

 

『堪えねばならぬ涙もある。だが、流すべき涙もある。弱さは――辛さは、流してしまった方がいい。俺らに気遣いなど、無用だ』

 

 一生懸命に優しい表情を作っている彼の顔はやっぱり恐いままだけど、想いは伝わりました。テルちゃんは「はい」と答えてから、たくさん泣きました。

 私達が知らない、彼女の今まで生きてきた事。婚約者さんへの想いとか、結婚のために苦労した事。いろんな想いが、涙と一緒に流れて、彼女の“辛さ”が出て行ったのだと、私は信じています。

 

 綺麗な涙だからこそ。泣いている彼女の肩に手を回そうとしたアホ鳥にはしっかりとビンタをしておきました――――。

 

動景 11、「 終幕 」

 

 東京都、某所。

 真夏の陽射しがビルの窓に反射する。さながら昼の星空とでも例えようか。

 高層ビル群に紛れるように佇むボロ屋。買い換えたクーラーが勢いよく唸っている。

 

 ――東京――今や多アジア人都市となりつつあるこの街に。世界の極々一部にだけ評判の小組織が住み着いている。

 彼らはまだ若くとも、類稀なスキルを持ち、そして多くの事を成してきた。・・・同時に多くの問題も残してきたのだが、そのことで彼らを責めても仕方が無いし、無駄なことである。

 この若きワケ有り家業屋集団。不本意ながら名を、『四聖獣』という。

 

 さて、そのボロ屋の中。

 台所と居間の間にある6人掛けのテーブル。向かい合って座っている男女。

 赤茶髪の青年は不機嫌そうに缶コーヒーのタブを起こした。

 白と水色の縞模様の服を着ている少女。組織のリーダーである彼女は頭を抱えている。

「気づけよ」

 赤茶髪の青年が口を開いた。

「無理よ。あんなの解るわけないじゃない……」

 苦々しく言葉を返す少女。テーブルの上には、雪山のような紙の数々。伝票とか文字で埋まっている請求書やら質問状やら……。家計は火の車どころかビッグバンの爆発にある。

 『驚愕! 白昼に聳える巨大ロボ!!?』の見出しで騒ぐTVの画面。

「おおっ、また映った! ねぇ、見てよ! 映ったよ!」

 はしゃぐ長い金髪の青年。その言葉を無視して溜息をシンクロさせるテーブルの男女。

 巨大なロボの建設費もそうだが、プール改造の費用、その他もろもろも含み。並の企業単位なら一見の下にギブアップを叫ばずにはいられない、そんな破壊的金額。空間移動にかかった電池代6000万などどうでもよくなってしまう。

「どうしようか・・・」

「どうしようも糞もあるか! 姉さんやら爺が汗水流してもこの騒ぎだからな」

「……ぐすっ」

「――ったく、しゃぁねぇなぁ。俺も出すよ、っつかそれでも足りねぇから一発飛んでくるわ。ほんと、しゃぁねぇっつぅか……」

 ちょっと目を放した隙の惨状に疲れ、コーヒーを一気に飲む。

 少女は目の前ですこぶる機嫌が悪い青年を見て、しょんぼりと俯いた。

「――食え」

 テーブルに置かれる2つのプリン。会話に割り込んできたのは青い髪の料理人。

 ぷるると揺れるプリンを眺める少女。赤茶髪の青年は訝しげにスプーンを手にした。

 

口に広がる――甘くて柔らかなプリンの香。

 

「……ほんと、お前はこの辺は解ってやがるよな」

「ね! 美味しいっ」

 少女はあまりの美味に他を忘れて微笑んだ。

 微笑む少女の面を見せられては、青年も仏頂面を保てない。若干に緩む表情を溜息で隠して、青年はスプーンを持つ手を進める。

「これほどの巨大な障害……誤魔化しの術も多いのだろう? なぁ、スザ」

「――ケッ。こんな時だけ達者な口だぜ、ったくよ」

 憎らしく口の端を上げる赤茶髪の青年。

 青い髪の料理人は「フ」と残して作り途中の味噌汁へと向き直った。

「ああっ、プリン! 僕のは!?」

 金髪の青年がひょいとテーブルに顔を出した。

「プリンっ!? 食うぞ!! どうだこれ!!!」

 家屋の声を聞き取ったのか。庭の木から全力で玄関を突き破った野生系の少年。

 掲げた左手には、「ミンミン」と鳴く輩がもがいている。

 テーブルの男女は「やれやれ」と首を振り、料理人は「ちょっとまってろ」と呟いた。

 

どさくさで紛れてしまっていたが……

 

「あの、すみません……」

 何度目かの呼びかけで、ようやくその声に気がついた5人。

 開けっぱなしの玄関(勝手口)に立つのは、白いワンピースの女性。

「たびたび、突然押しかけて申し訳ありません」

 玄関で頭を下げるワンピースの女性。

 立ち上がる、スプーンを手にした少女。

「あの、すみませんが……やっぱり家に帰るのが気まずいので。もう少しだけ、泊めてもらってもいいでしょうか?」

 緊張しているのか、申し訳なさが一杯一杯なのか。頬を染めているワンピースの女性。

 

 

「テルちゃん!」

黄龍が笑顔で女性の名前を呼んだ。

 

「おおっ、輝歌! 見ろ、テレビ!!」

玄武が誇らしげにTVの画面を指差している。

 

「――これで食卓の席が埋るな」

青龍が味噌汁の味見をしながら微笑んだ。

 

「輝歌、OKだ。俺はいつだって君を歓迎するよ」

そう言ってワンピースの女性をエスコートする朱雀。対応がスムーズ過ぎるその腕を掴み、「この汚い手を離せ!」と黄龍が2人を引き離そうと躍起になる。

 

 

「あらあら?」

と、目を点にしている輝歌。

 

白虎はよくわからないけど、皆が楽しそうなので

「ガッハハハハ!!」

と胸を張って笑った。

 

 

 手にしていた蝉は再び飛び立ち、裏手の玄関からするり、庭へと逃げて行く。

 

 即座、「プリン! バケツのプリン!!」と響く虎の声。

 料理にプリンに来客に。そして控える洗濯物の山に苦悩する料理人の秘めた心情など、いざ知らず……。

 

 

 

 ろくすっぽ使われない2階の角部屋。今日からここには清楚な少女が寝泊まる。

 

 ベッドの脇には。

 乱暴ながらも、しっかりと持ち帰った強敵の名残が立てかけてある――――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辰羅神信仰

 

これにて......

 

 

 

終・幕

 

 

 

――――です。長文の御読破。感謝、感謝で御座います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↓以下、人物名等の表記↓

 

 

 

主要登場人物  劇中名、本名の一覧

 

黄龍 ―― 高山 奈由美(たかやま なゆみ)

玄武 ―― アーティ=フロイス

青龍 ―― 青山 龍進(あおやま りゅうしん)

朱雀 ―― アルフレッド=イーグル

 

白虎 ―― 白虎(びゃっこ)

輝歌 ―― 天上 輝歌(てんじょう てるか)

 

金色の狐 ―― 光天館(こうてんかん)

黄土の狐 ―― 然汪館(ねんおうかん)

緑色の狐 ―― 無双館(むそうかん)

紫色の狐 ―― 幻牢館(げんろうかん)

 

赤色の狐(八つ目の狐) ―― 辰羅神(たつらかみ)、及び「達沖」。

 

 

 

 

製作関連

 

物語 ―― 四聖獣

企画 ―― プロジェクト・グダ

 

 筆者 ―― 森の人

 図画 ―― F。モ

  2009/12/30 初版公開

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お客様各位へのご案内

 

 本編の閲覧、誠にありがとう御座います。当ストーリーは3部構成の第2部となっております。第三部「羅の節」は『孤島遊び』と称してファイルに御座います(工事中の可能性アリ)。

 物語では中編に当たる「孤島遊び」ですが、こちらはほぼ独立したストーリーとして展開いたしており、本編の解説としても機能しているものなので、読破後に疑問の残った方、興味のある方は是非是非ご覧くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――以上!!

唯、感謝!


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